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2016.12.09

お菓子がそこにある物語vol.3《イチゴのショートケーキ》

皆さんはなんのケーキが好きですか?
今回は《イチゴのショートケーキ》が嫌いな女性のお話です。
昔の自分との違いにこっそり傷つく彼女がショートケーキから気づいたこととは。

あなたもこんな経験、ありませんか☆


***************************************

私はショートケーキが嫌いだ。

ーーーとくにイチゴのショートケーキが。

『ありがとうございましたー』

家から15分のところにあるハッピーシュガーは3歳の娘のお気に入りのケーキ屋さんだ。

お店の小さなお姉さんが好きらしい。

『みーちゃん、ね、イチゴ』

キラキラしたケーキが並ぶショーケースにへばりついてミクが小さな指をさしたのは
イチゴのショートケーキだった。





『みーちゃん、これかー、、んー、、じゃあママも同じのにしようかな』

ホクホクしたほっぺが可愛い。
ミクは嬉しそうに私にわらった。



若い頃から東京に出ていて
アパレルの世界に入りたくて専門学校に入った。
見た目とはちがうタフな世界に体力も、金銭的にもついていくのがやっとだった。

でも、そのきらびやかな世界で必死で高いヒールで一人で立っている。

そんな自分が好きでもあった。

彼氏だって何人かいた。

私は甘いものが大好きで。
よく彼にワガママをいってショコラのムースやフランボワーズのケーキを
プレゼントしてもらっていたのを思い出す。

『ショートケーキなんて食べたことなかったな』

イチゴのショートケーキ。

誰もが好きで、誰にも嫌われない、存在。

キラキラ世界でたっているには、ふさわしくない食べ物に思えたからだ。

それでも働いているうちに、疲れてしまったのも事実だった。


ひょんなことから知り合った5つ上の旦那には初めから自然と肩肘張らずに接することができた。

結婚して彼の転勤できた新潟。


もちろん、東京にいたときの私を知るひとなんて一人もいないーーー。



『さむいねー』

新潟に来てからとった車の免許。ミクはチャイルドシートにちょこんとおさまっている。

イチゴのショートケーキの箱をじーっと首を後ろに曲げて見つめている。

『みーちゃん、前見て。あぶないよー』
『うん。。転ばないかみてる』

3歳になったミクはいつも面白いことを言う。

この子が生まれて本当に幸せだし、とても楽しい。もちろん不安なこともあるけど、それでもミクの笑顔は私を癒してくれる。

でも。

どこかで。
あの時、ショコラのムースを当たり前に食べていた私。

木苺のマカロンをプレゼントされていた私は、もうどこにもいなくなってしまった。

そう感じるたびに、

私は私を失ったような気がしていたのだ。

キラキラした高いヒールを履いた自分。

失ってしまった輝きーーー。




『いただきまーす!!』

家に着くと一目散にミクは台所に走って行った。待ちきれないようだ。

この間高校時代の親友から内祝いでもらったお皿をだす。

赤いみんなが大好きなイチゴが乗ったショートケーキは、柔らかな曲線を描く陶器によく似合った。

ちゃんと習ってきたいただきますをしてミクがフォークをイチゴにヨタヨタとさす。

最近はフォークも上手になった。

いい香りの紅茶が、ティーカップで揺れている。

つい、いつもは買わないはずのイチゴのショートケーキ。

ミクがあんまり嬉しそうだからつい、同じのにしてしまった。

こっそり、あの頃と違う選択をした自分に傷つきながら。

フィルムを剥がして、三角になったケーキの先をフォークで下まで切る。

柔らかい。

そして口にいれた。





『ーーーーおいしい。。』

つぶやいた私にミクはうれしそうに

『おいしいねーミクのケーキおいしいねー』

と口にクリームをつけてニコニコしている。


おいしい。。知らなかった。

ショートケーキがこんなに美味しいなんて。

柔らかくて、生クリームがふわっととけて、
イチゴは甘酸っぱくて、爽やかだ。

なんだ。

と思う。

私はショートケーキが嫌いなんじゃなくて、
知らなかっただけなのだ。

紅茶を一口のんで、ショートケーキを二口目を口に入れる。

こんなに優しくてあったかいケーキを、食べずに来ただなんて。


『ママーおもしろいのー?』

口にクリームをつけてきょとんとしてミクが見つめている。

私が笑っていたから。

『なんでもないよーおいしいねー』

そうか。

私はあのころのキラキラした自分を失ったんじゃない。。

この変哲もないイチゴのショートケーキの美味しさを知れる、新しい自分を増やしたのだ。

隣を見るとミクはもう食べ終わっていた。

『ママーつぎはチョコ食べるー』
『えー?』

笑ってしまう。ケーキを食べた後にすぐ次に食べるケーキの話をするとは。

きっとこの子は私に似たに違いない。

そのうちショコラのムースや、木苺のマカロンも食べたいと言いだすだろう。

私がそうだったように。

きっと味にもうるさいに決まってる。

その時はハッピーシュガーに行って一緒にあれでもない、これでもないと2人で楽しもう。

それはきっと近い将来やってくるはずだ。

『でもイチゴのもまた食べたいー』

その時まで、この子としばらくイチゴのショートケーキを楽しもう。

きっとそれはほんの短いかけがえのない時間になるはずだから。


あれこれとしゃべるミクを横目で見ながら
私は名残惜しい最後の一口を口にいれて、新しい紅茶を注ぐために立ち上がった。



end










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